SFなどで夢の技術としてよく登場するワープ技術。
他にもテレポーテーションや瞬間移動とも呼ばれたりするアレです。
そして近年、急速に一般家庭にも普及し始めている3Dプリンター。
今回は、この3Dプリンターを使うことによってワープ技術は可能になるのかということを考察していきたいと思います。
想定するワープ装置について
今回の記事で考えるワープ装置は再構築型です。
手元にある送りたい物体の情報を読み取って解析、転移先にてその情報を元に再構築するというステップを想定しています。
以下の記事を読んでいただくと、概要が掴めるかもしれません。
ワープを実現するにあたって定義する条件は
- 現在とは比べ物にならない速度で物体を移動させることができる
- 転移先に出力用のデバイスが用意されてなければならない
- 見た目だけではなく、内部構造的にも違いが分かってはならない
以上としておきます。
なお、魂や記憶などといったものの構成は未だに判明していないため、今回の記事ではあくまで「物体」のワープとして話を進めていきます。
現在とは比べ物にならない速度で物体を移動させることができる
ワープと銘打つからには、現在の流通では考えられないほどの速度で移動しなければなりません。
時間がかかってしまうのであれば、それは宅配便で事足ります。
かと言って一瞬というのは厳しいと思うので、条件さえ揃えば世界中どこでも5分以内程度で移動できることまで許容します。
出力用デバイスが必要
転送先(ワープ先)に出力用のデバイスが置かれていることを絶対条件とします。
出力用デバイスが存在しない任意の空間から物体を出力することができるのであれば、それは最早、再構築するまでもなく物体の転移が可能となっており、前提条件は崩れます。
よってあくまでこの記事においては、出力用デバイスの存在を不可欠とします。
内部構造的にも違いが分かってはならない
外観だけの模倣品であれば、それは同じ物体と呼ぶことができないのは明白です。
同じ見た目、構造のみではなく、データなども再現しなくてはいけません。
例えば、スマートフォンをワープさせても見た目だけのモックアップであるのは論外です。
仮に動作したとしても中身のデータが引継ぎされていなければ、同一物体だとすることはできません。
実際に触ってみて、元のものと何か差異を感じるような設計では失敗と言えます。
現行の3Dプリンター技術について
現在の3Dプリンターである物体を出力するためには、以下のような手順が必要です。
- CADで自作または配布されている三次元形状データ(主にSTLファイル)を用意、または3Dスキャナーでデータを用意
- スライサーを使ってG-codeに変換
- G-codeを3Dプリンターで出力
このような3段階の手順を経てようやく印刷することが可能です。
各ステップにおいて、ワープ技術を実現するために改善しなければならない課題を考えていきます。
三次元形状データ(STLファイル)を用意
手元にある物体の情報を用意するのに、CADで自作や配布されているものを探すなんてのは無理です。
なので3Dスキャンが考えられます。
一般的な光学式3Dスキャナーでは外観の情報は得られたとしても、内部については一切スキャンすることができません。
よって病院などで使われるCTスキャナーをデバイスに採用します。
CTスキャンしたデータを3DCADデータへとリバースモデリングを行い、中間ファイルとしてSTLファイルに変換します。
現行の3Dスキャナーでは使われている素材や、内部の記録メモリーの情報などについては取得することができないため、ここが改善点となります。
スライサーを使ってG-codeへ変換
以上の手順でスキャンされた物体のSTLファイルを用意したら、3Dプリンターが理解できるG-codeへと変換しなければなりません。
スライスする際に様々な条件付けをする必要があります。
ただ、上記改善点である素材や記録メモリーの情報についてスキャンが可能になれば、この点も自動で適切なスライス条件を付与できるようになります。
ですので、出力先デバイスである3Dプリンターに、STLデータを受信すれば適当な設定でスライスしてくれるソフトを搭載すれば問題はありません。
G-codeを3Dプリンターで出力
これが一番厄介な段階です。
例えば、プラスチック製の物体であればFDM(熱溶解積層体法)、樹脂の物体であればDLPやSLAの光造形方式、金属の物体であればSLS(レーザー焼結法)などなど、単一の素材であるのならば手法は確立されています。
しかし複数の素材で構成された物体の場合は、それぞれに応じた部位において異なる方式で出力しなければなりません。
複数個の出力方法と素材を出力先デバイスへと用意する必要性があります。
また、現時点では記録情報などのデータを印刷する技術はないので、ここが改善点となります。
ワープ装置のおおまかなステップ
以上の点を改善し、以下の手順を踏めば、理論的には再構築型ワープ装置の完成です。
- 入力用デバイスにて転送させたい物体の情報をスキャン
- スキャンした情報をデータ化して3Dプリンターが理解できる形式に変換
- 変換したデータを出力用デバイス(転送先)に送信
- 転送先にてデータを元にスライス作業、及び出力して再構築完了
改善点も多く、現実的ではないかもしれませんが、ワームホールを探したり、カーブラックホールを生成することに比べればまだ、可能性を感じるのではないでしょうか。